台北の故宮博物院はあまり自分には刺さらなかったんだけど、
国立台湾博物館は刺さった。今回台北で行った博物館の中で一番良かった。
国立博物館というのは、その国が自国をどう捉えていて何を学術的・美術的に大事にしているか(またはしていないか)を手っ取り早く知ることができる場所だと思う。だから、海外に行くときに国立博物館と名のつく場所が行動範囲内にあったら、必ず日程に入れると決めている。規模や評判に関係なく行く前提なので、事前チェックするのはアクセス・休館日・開館時間くらい。今回、国立台湾博物館もそれ以外の知識ゼロで行った。
そしたら、国立台湾博物館にはあたしが長年なんとなく不思議に思っていたことの答え(の1つ)があり、テンション瀑上がりだった。
不思議に思っていたのは「日本に統治されてたのに、なんで台湾は親日なのか」ということ。
だって普通、植民地化されてた国はしてた国に対してあんまりいい感情を持ってないよね*1?実際、日本は韓国のことも統治してたことがあるけど、韓国って台湾ほど親日じゃないよね?どういう心情で台湾はそんなに日本に好意的になるわけ?
でも、国立台湾博物館には、日本が統治時代にどんな貢献をしたのか、それが台湾にとってどんな意味があったのかを示す展示がたくさんあって*2、「なーるーほーどー」とめちゃくちゃ腑に落ちた。
例えば、植物学者の川上瀧彌。彼はそれまで西洋の植物学者も行かなかった台湾の高地や離島で何年にも渡って植物採集を行い、数々の固有種を発見・記録し、結果的に台湾の植物学の基礎を築いたんだそう。たくさんの著書もあるようで、複製本が展示されていた。

似たようなパターンで、鉱物学者の岡本要八郎が台湾の鉱物学*3の基礎を築いたという展示もあったし、昆虫学者の素木得一が台湾の昆虫学のパイオニアになったという展示もあった。
つまり、台湾におけるいろんな自然科学を立ち上げたのは日本人で、台湾人もそれを評価している、ということなんである。
また、台湾はもともと様々な先住民がいたところに漢民族が中国から大挙してやってきてできた国なんだけど、清時代における先住民の分類は、漢民族に同化してるかしてないかで「cooked savages(直訳:調理済みの野蛮人)」か「raw savages(直訳:生の野蛮人)」だったんだそう*4。ヒドイ。
それが日本の統治時代になると、先住民たちは民族学的に調査・分類され、得られた知見は教育の一環として台湾人たちと共有された。このとき、児童向けの教材として、日本は博多人形の技術を使って各民族の男女像まで作ったそうで、実際に人形たちも展示されていた。これ、ちょっといい話じゃない?

各民族の特徴を台湾の子供たちに教えるため作成された人形たち(右)
こういう取り組みは、台湾人が民族同士の理解を深めたり、それぞれの民族という枠を超えて一緒に台湾人としてのアイデンティティを形成することに大きく寄与したんじゃないか。そして、第三者である日本人による取り組みだったというのも良かったのではないか。当事者同士ではやりにくかったであろうことを日本が勝手に、でも細やかなやり方で行ったのは、台湾にとってありがたいことだったのではないか。
実際に台湾人がどう思っているのかは、聞くチャンスがなかったからわからない。だから、これはあくまでもあたし個人の印象と推測だし、台湾が親日な理由は他にもある可能性大だけど、「なんで台湾は親日なのか」を理解する方向性としては合ってる気がする。
ちなみに、こういう、台湾をちゃんと理解して統治しようという動きは、どうやら4代目の台湾総督である児玉源太郎氏と当時の民政長官だった後藤新平氏から始まったようで、2人の銅像もあった。すごいなぁ。

館内ではここだけ日本語の説明パネルがあった
しかし、館内で見た日本人名、知ってるの1つもなかったよ…。川上瀧彌は阿寒湖でマリモを発見した人としても有名らしいけど、やっぱり聞いたことなかったし。
日本の台湾統治についてだって、下関条約で日本が清から台湾を譲り受けたってとこまでしか知らなかったもんなぁ。だってそれ以上学校では習わないよね?
でもとにかく、思わぬところでなんとなく不思議だった謎が解けて面白かった。やっぱりその国の国立博物館は行くべき。