役に立つかは別として

頭の中にあるゴチャゴチャを出しとけばスッキリするかも

貧乏になった先に見える倫理崩壊

大腿骨頸部骨折をして人工関節置換術を受けた母は退院した。

危なっかしいから杖は使うようにしてもらっているけど、杖なしでも歩けないことはないというレベルになった。かがんだりしゃがんだりはまだできなくて、不便なことは多いけど、まあそれなりに生活している。

有り難い。

正直に言うと、とうとう寝たきりの親を介護する日々に突入するのか……とか、動けなくなって絶望する母を見るのはキツすぎるわ……とか、一時期いろんなことが頭をよぎってたんだよね。でも、とりあえず今回はセーフだった。

感謝しかない。

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さて、そんなこんなで思うこともいろいろあったんだけど、日本の医療について1つ書きたいことがあるから書く。

ずっと前にも、余分な検査や処方が多いことに対する怒りについて書いたし、

www.saki-imamura.work

保険絡みの手続きの非効率性についても書いたけど、

www.saki-imamura.work

今回も余分な検査や処方で酷い目に合ったり、保険の手続きでまた頭にくる対応をされたりした。本当におかしいと思う。でもその話は置いておいて、別の話。

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今回、大腿骨が折れて吐き気がするくらいの痛みに耐えている母を連れて救急に行ったら、満床で受け入れられない、退院予定の患者さんもいないので、いつベッドが空くかもわからないと言われた。

他の病院に連れていくことも考えたけど、母は痛くてもう動けないと言う。

困り果てていたら「とりあえず診察はできますが、どうしますか」と言われたので、診察してもらったら他の病院を紹介してもらえるかもしれないと思い、診察してもらった。

そしたら、派手に大腿骨が折れていて人工関節置換術しか方法がないことが判明し、突然入院が可能になった。

は?どゆこと?と一瞬思ったけど、心底困っていたので深く考えず、じゃあお願いします!と飛びついた。

すると、「個室しか空いてないので、差額を払う同意書に署名してください」と言う。

は?病院側の都合で個室しか提供できない場合、患者が差額を払う義務はないでしょ?と思ってそう言うと、入院手続き担当のお姉さんは「確認してまいります、少々お待ち下さい」と立ち去り、しばらくして別の人が現れた。そして「では、病棟にご案内します」と言う。

は?個室の話はどうなったん?さっきのお姉さんはどこ行ったん?と思いつつもついて行くと、しらーっと大部屋に案内された。

……大部屋の病床あるんやないかい!!

てか、病棟を歩いていく途中に他の部屋の中もチラッと見えたけど、空いてるっぽいベッドは他にもあった。どこが満床なんじゃ!

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満床と言われたのは今回が初めてだったけど、「個室しか空いていないので、差額を支払う同意書に署名してください」と言われたのは、実は初めてではない。

ここ数年の間に、父が1回、母が今回を含めて2回入院していて、あたしが3回とも事務手続きをしたんだけど、3回とも「個室しか空いていないから差額を払え」と言われた。

1回目の時は「あれ?病院側の都合で個室になる場合、差額を払う義務はないってどこかで読んだことがあるような……違ったっけ?」と思って聞いてみただけで、違うと言われたら素直に差額を払うつもりだった。だって、苦しんでる家族がいて切羽詰まってたら、じゃあ入院やめますなんて言わないよね?多く払ってでも入院させてもらうよね?

でも、「確認します」と入院手続き担当者が消えたあとに看護師が現れ、何事もなかったように大部屋に通された。

2回目に「個室しかない」と言われた時は、1回目の記憶が頭をよぎり、ホントかよ…と思いつつ「あれ?差額を払う義務ってありましたっけ?」ととぼけたら、やっぱり質問には答えてもらえないまま、しらーっと大部屋に通された。

そして今回3回目でも上に書いた通り、全く同じ対応をされたというわけ。

しかもこれ、3回とも違う病院なんだよね。つまり、系列も全然違う、3つの別々の病院で全く同じ嘘をつかれた、ということなんである。

みんな、どう思う?

個人的には、

  • 病院側の都合で個室しか提供できない場合、患者に差額を支払う義務はないというのは本当
  • 病院側はそれを百も承知で、大部屋があってもとりあえず「個室しかありません」と担当者に言わせ、患者に個室を売ろうとしている
  • そういうことをする病院もあるという話ではなく、かなり高い確率で、どこの病院もこの手口を使っている

としか思えない。信じたくないけど。

それだけじゃなく、今回の3つ目の病院に至っては、「手術必須の客=利益率が高い客」という計算があったから突然入院が可能になったのだとしか思えない。これが、固定してひたすら骨がくっつくのを待つしかない普通の骨折だったら、入院費と鎮痛剤くらいしか請求できなくて効率が悪いから、他の病院にたらい回しにされていた可能性が高いのではないか。

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今回、3回連続で別々の病院に同じ手口を使われて強く感じたのは、病院に騙されそうになった怒りというより、日本の医療機関の経営ってどんだけヤバいの?という不安だった。

倫理的にアウトな営業を、あろうことにも切羽詰まった患者という社会的弱者に対して、(恐らくかなりの確率でどの病院でも)やっているというのは、逆に言えば、そうでもしないと経営が成り立たないくらい日本の医療がおかしなことになっているという現れなのではないのか。一部の悪徳病院がそうしているだけなのではなく、どの病院もしてることだとしたら、ヤバすぎるのではないか。

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いわゆる発展途上国のような、裕福ではなくて社会的インフラもイマイチの国だと、賄賂が必須になっていることが多い。

どうして賄賂が普通になるような状況が形成されるのか、今まであまりピンと来なかったけれど、今回「満床で受け入れられない」と嘘をつかれ、更に「個室しかない」と嘘をつかれて、なんとなくわかってしまった。きっと、社会的インフラがきちんとした対価を得られていなくて、稼ぐためにボーダーラインなこともするのが普通になると、サービスがどうしても必要で倫理云々にかまっていられない消費者も目を瞑るようになり、賄賂がシステム化されていくんだろう。

お金を持っていて、すでに賄賂やキックバックが当たり前になってる日本の政治家たちはなんとも思わないのかもしれないけど。