最近、これを読んだ。
宇宙開発の話はわりと好きだし、その中で火星関連の話もよく出てくるから面白いなぁと思って読み聞きしてたけど、火星移住がここまで具体性を帯びてるとは知らなかった。いやもう、SF小説じゃなくなってるね!
火星に人類を送ること自体はもうそれほど夢物語じゃないと思う。簡単だとは思わないけど、どちらかと言うとロジスティクス的な問題がほとんどな気がする。人類はあたしが生まれる前にすでに月面着陸してるし、かなり間が空いたとは言え、今もまた月を目指してる。基本的なやり方はわかってるし経験もある状態で、それを火星というもっと遠い場所で行うにはどうすればいいのかという話なんだから、頑張ればできそうな気がする。
でも移住となると話は違う。住むところも食べるものも現地調達の目処がなければ無理だし、そもそも火星は大気的にも温度的にも人が生きていける環境じゃない。だから、移住を想像しようとしてもSF的な想像しかできなかった。この本を読むまでは。
それにしても科学の力はすごい。とくに物理と化学。
著者のロバート・ズブリン氏は「天然資源などというものは存在しない。天然の原材料があるだけなのだ。」と何度も言っていて、人類がいかに今までさまざまな原材料を創意工夫を持って資源化してきたか説明している。言われてみるとそうだ。原油とかだって、精製して使う技術がなかった頃はただの黒い液体だったわけで。
だから火星でも必要なものは人類の創意工夫で作り出せるという話で、二酸化炭素はこうやって集めればいい、水はこういう仕組みで得られる、水と二酸化炭素があれば酸素もロケット推進剤も作れる、水は住居の建材としても使える、農業はこういう形になる、みたいな感じで1つ1つの課題に対応する方法の説明を科学的にしてくれている。単にあたしが理系じゃなくて知識がないからなのかもしれないけど、こんなこともそんなこともできるのか!と感心してしまった。
もちろん、現時点ではまだ完成していない技術もたくさんある。でも、「ここがこのレベルまで到達するとこれができるようになり…」とか「まずこれをこうすればいずれこれができるようになるだろう」みたいに理論的な道筋は描けている。火星移住の先に見えるビジネスや発明などの可能性についての説明を読んでも、どれも誰かがお金儲けのために必ず実現させるだろうとしか思えない感じだし、実現するんじゃないかと思えてくる。
あと、火星移住の話を新天地を求めてヨーロッパ人たちがアメリカに移住した話に重ね合わせて様々な想像を展開させているのがとても納得感があって面白かった。
火星くんだりまで移住するのは大変だけれど、当時ヨーロッパから未開発のアメリカに移住したのだって大変だったわけで、今の境遇から脱却したいとか、人生を一からやり直したいとか、一発当てたいとか、当時と似たような理由で火星移住を選ぶ人が出てくる可能性は高い。
そして、アメリカが捨てられるだけのしがらみを捨てた状態で建国して現代の民主主義を形作ったように、火星でも地球のしがらみを捨てた新しい社会構造が生まれるかもしれないし、今までになかったニーズを満たすためにアメリカで技術革新が進んで大経済圏ができたように、火星でも地球にないニーズを満たすべく、地球では簡単に起こり得なかった方面の技術革新が起こってとんでもない規模の経済になるかもしれない。
そういう意味では、人類は月とか火星みたいな新たなフロンティアを必然的に必要としているのかもしれない。今の世の中には、政府や組織が腐っていても壊せなくて絶望的だったり、新しい技術やシステムを試したくても現行の技術やシステムに阻止されて難しかったり、ということがたくさんある。そしてそういう「ガラガラポンでもしない限り無理っぽいけれど、ガラガラポンも到底できそうにない」という状況に対する一番いい薬は、新しいシステムを構築して繁栄しているお隣さんを見せつけられることなんじゃないか。
あたしが生きてる間にどこまで火星移住の話が進むのかはわかんないけど、たくさん進んで欲しいなぁ。あたし個人は火星に行く気力も体力も財力もないけど、人類が火星に行くところは是非とも見たい。
