あたしは親友に捨てられたことがある。
小学校からの大親友で、高校で別れるまで毎日一緒だったし、そのあとも事あるごとに会っていた。こう言っちゃあなんだけど、家族なんかよりずっと大事な人だった。この人だったら自分に何かあったときにはどこにいようと必ず駆けつけてきてくれると心から信じていた。
あたしがアメリカに行ってからは物理的な距離ができてしまったけど、帰国すれば必ず会っていたし、会っていればそれまでの会っていなかった時間なんて関係なかった。
最後に彼女に会ったのは、あたしが帰国して2人で旅行に行ったとき。
旅行はすんごく楽しかった。少なくともあたしは。
だけど、それを境に絶交された。
メールしても電話しても家に行っても手紙を出しても無視された。
どうしてそうなったのか全くわからなかった。ただただ途方に暮れて泣いた。
そして何年も経ってから、あたしは同じことを別の友達にした。
親友と呼べるほどではなかったけど、結構仲良くしていた友達。
当時、あたしは「この人と結婚するのかなぁ」と思っていた彼と別れたあとで、なんとか彼を忘れてやっていこうとしていた。なのに、彼と面識があった彼女が彼の噂話をしてくる。
やめて、と頼んだらしなくなったけれど、何ヶ月も経ってあたしが立ち直ってきたころ、「この間彼にバッタリ会ったよ」と言われた。「あんた、あの子に何したの?って言ってやったら困った顔してたよ」と。
ものすごく些細なことだし、そんなこと気にしなくていいのに、青天の霹靂というか、完全に無防備でいたら突然刺された、みたいな衝撃があって、このときあたしの心はポキっと音をたてて折れた。
「悪い、行かなくちゃ」
これがあたしが彼女に言った最後の言葉。
「オッケー、また電話するね~」と彼女は言った。
そして実際、その後何度も彼女は電話してきたしメールしてきた。
でもどうしても電話に出る気にもメールに返信する気にもなれなかった。彼女にはもう心を開けなかった。
そしてそのあと、なんで親友に捨てられたのかハッと気づいた。
旅行中、付き合ってる人がいると彼女はあたしに打ち明けたんだった。相手は妻子ある人だと。
彼女は恋多き女というか、いつも誰かに夢中になってる人だった。会うたび「今好きな人」の写真を見せてくれるんだけど毎回違う人だったりして。
それに旅行はすごく楽しくて、あたしたちはバカみたいにずっとはしゃいでいた。
だから、このときあたしは深く考えず「不倫なんてやめときなよ」と言ったんだった。「あんたはもっと価値がある人間なんだから」と。
今ならわかる。
親友は本気だったんだ。
だからあたしの軽い言葉に心が折れたんだ。あたしに心を開けなくなったんだ。
今ならわかる。
元カレの話題を出してきた友達は、何も考えず単に楽しくお喋りしていただけだったんだ。あんたの味方だからねとあたしに言いたかっただけなんだ。
何年も何年も経ってからやっとわかった。
でも、何度考えても、あの時のあたしが違うことを言って違う行動をとれたとは思えない。
だから後悔すらできない。
でも失ったものは戻らない。
今朝、親友だった人の夢をまた見た。